書肆短評

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【訂正表追加】アニクリvol.7s_特集〈アニメにおけるバグの表象〉発刊 #C96

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先日は夏コミお疲れ様でした。編集Nagです。

二冊刊行に加えて諸々の時期が重なった結果、いくつか本文に入れられなかったり、ミスが残ってしまったものがありました。この場をお借りしましてお詫び申し上げます。

当日までに見つかったものにつきましては、別紙として印刷→特装版のクリアファイル(地味)に訂正版を挟みつつ、「これからもバグが見つかったら(ないほうがいいのだけど)さしこんでいってね」というお話をしていたのですが、当日も早々に売り切れてしまい、その後お渡しする機会を逸しておりましたため、本文差し替え版をここに公開するとともに、訂正表を下記に掲げます。

 

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アニクリ vol.7s & vol.3.5  追加ファイル+正誤表

 

1、01_05_てらまっと+藍嘉比沙耶稿

 藍嘉比沙耶さんの自己紹介文が時間的に入れられなかったため、夏コミ当日配布。

 ※ てらまっと稿本文には訂正箇所なし

 

2、8_17_安原まひろ稿+竹内未生コメント

 竹内さんからのコメントが時間的に入れられなかったため、夏コミ当日配布。

 ※ 安原まひろ稿本文には訂正箇所なし

 

3、26_39_竹内未生稿

 図1−3等ハイフンが入っている箇所について、4箇所、「図3」等ハイフン抜きの表記とすべき箇所が残っていたため、20190826修正。

 ※p.29下:8-11行

  • (誤)実際の作中においては、図1-3のカットからカメラが左方向に急速に進むことで図1-1→図1-2の描写になる。このとき図1-3の緑の物体と...
  • (正)実際の作中においては、図3のカットからカメラが左方向に急速に進むことで図1→図2の描写になる。このとき図3の緑の物体と...

 ※p.29下:17-21行

  • (誤)このように図1-3の物体と図1-2の物体の同一性が理解されることは、それぞれの物体の特徴を結びつけて理解することを可能にする。つまり、図1-3で描かれる物体が、元々半球体なのではなく、...
  • (正)このように図3の物体と図1-2の物体の同一性が理解されることは、それぞれの物体の特徴を結びつけて理解することを可能にする。つまり、図3で描かれる物体が、元々半球体なのではなく、...

 ※p.30上:1-3行

  • (誤)ところで、図1-3で描かれる、まな板のうえに素材を置き、包丁によって一定間隔で切ってゆくというやり方は、「千切り」といわれる切り方を連想するだろう。
  • (正)ところで、図3で描かれる、まな板のうえに素材を置き、包丁によって一定間隔で切ってゆくというやり方は、「千切り」といわれる切り方を連想するだろう。

 ※p.30上:11-15行

  • (誤)このように緑色の物体が「野菜」として理解されることは、「野菜」の切り方として「千切り」は自然であることから、図3の活動が「千切り」であることを確証するだろう。つまり、緑色の物体が「野菜」であることと、図1-3の活動が「千切り」であることは、お互いに支えあうような推論なのである。
  • (正)このように緑色の物体が「野菜」として理解されることは、「野菜」の切り方として「千切り」は自然であることから、図3の活動が「千切り」であることを確証するだろう。つまり、緑色の物体が「野菜」であることと、図3の活動が「千切り」であることは、お互いに支えあうような推論なのである。

 

4、86_97_みら稿

 本文の図表の色彩が暗く図の読み取りに困難をきたすためカラー版と差し替え。期間限定公開のものと同。

 

5、98_100_田中大裕_講演記録

 当日までの編者のミスにより主催者への確認ができなかったため、改めて確認を受けて夏コミ当日配布。

 

6、110_123_あにもにのコピー

 フクロウさんからのコメントが時間的に入れられなかったため、夏コミ当日配布。

 ※あにもに稿本文に訂正箇所なし。

 

7、vol.3.5_16_37_難波優輝

 バグ号ではないものの、音楽号の方で編者と著者の間での図の受け渡し時にミスが発生し、図3が誤って図4と同一のものとなっている(※確認すればわかるが、若干似ているものの異なる。)ため、期間限定公開時に下図に差し替え。

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------以下寄稿募集時

 

 

 

溝口力丸 on Twitter: "アレクサ、全部消して
Hey Siri、あの子を止めて"

https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1134037049525149696

 

早乙女まぶた on Twitter: "バラバラにされた鳩羽つぐを修復しているがどんなに頑張ってもうまくいかなくて絶望的な気持ちで切断面をテープで繋ぎ合わせている(肩に腕、首に頭、それは分かっているのに、うまくいかないのだ)"

 

 

 [表紙: 進捗]

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「ミラーワールドとは、現実の都市や社会や私たち自身といった物理世界の情報が全てデジタル化された〈デジタルツイン〉で構成される鏡像世界のことだ。デジタルツインについてはドイツの「インダストリー 4.0」といったスマート製造業の文脈でご存知かもしれないが、ここで双子になるのは〈世界〉そのものだこのデジタルツインの世界では、デジタル記述されていない物体は、いわばダークマターでしかない。あるいは伝説のSFアニメ電脳コイル」において、それは単純に「バグ」と呼ばれる。12年前のこの作品で監督の磯光雄は、子供たちが没入する拡張現実の空間を描き出した。その空間とリアルのズレが「電脳コイル」と呼ばれるわけだけれど、僕らはまさにこれからふたつが重なり合う世界を生きることになるだろう。」

Michiaki Matsushima 2019, Wired, 33

 

「一つの時代の黎明期は、まだ誰も「起承転結」の「起」しかしらない。それで人生を語れる人間が、まだ一人もいない。(中略)気をつけたいのは、完成度を求めるあまり、こうした「起」しかない題材に、前世紀の「承転結」をくっつけてしまいがちなこと。21世紀の物語を作りにあたって、それは何としても避けたい。」

磯光雄 2019, Wired, 33

 

「いつの日か、地図製作組合は、帝国の地図を作り上げるだろう。それは帝国の領土と全く同じ大きさで、全ての地点が一致したものだ

Jorge Luis Borges

 

「現実の風景(ランドスケープ)と情報の風景(インフォスケープ)のあいだに大きな落差が生まれ、そしてインフォスケープもまた複数に分裂し始めている」

東浩紀, 2015, 『テーマパーク化する地球』(2019)所収

 

 

1、検討・寄稿募集作品例:

 

今号では、アニメ制作段階/映像/視聴段階など諸段階における「バグ」についての検討が可能な作品、あるいは、それらバグがいかに表象されてきたかについての検討が可能な作品を広く募集したい。

また、あわせてアニメにおけるサイバースペース(電脳空間)の表象(それは時に「精神世界」と地続きのものとして描かれてきた。)についての検討が可能な作品についても、広く募集したい。

なお、全体の章構成は、以下の通りである。 

 

【章構成】

第1章 状況:「作画崩壊」 archive 2018-2019(※)

第2章 アニメにおける「バグ」の表象(下記作品例参照)

第3章 実験アニメーションの現在 archive 2019.06.08

第4章 アニメにおける「サイバースペース」の表象(下記作品例参照)

※第1章については、①てらまっと 「多層化するスーパーフラット(4.0):藍嘉比沙耶とレイヤーの理論」、②ナンバユウキ 「作画崩壊の美学」、③DIESKE 「作画崩壊の形式的な分析にむけたノート」、④tacker10 「「作画崩壊の形式的な分析にむけたノート」に関するメモ書き」を改訂・再掲する。ここから、上記既存論考へのさらなるレビュー・コメントも広く募集する。

 もちろん、これら既存論考に加えて、「作画崩壊」に関する新規論考も募集する。 

 

【募集作品例】

SSSS.GRIDMAN

ケムリクサ

きみと、波にのれたら(※前号「アニメにおける線」の続き)

・・・ 

Serial experiments lain

TEXHNOLYZE

電脳コイル

妄想代理人

攻殻機動隊

イノセンス

.hack//SIGN

新世界より

シムーン

フラクタル

ハーモニー

ブギーポップは笑わない

・・・

などなど(上記はあくまでも例示に過ぎないため、自由に作品を選定いただきたい。)

 

 

2、寄稿募集要項

 

(1)装丁・発刊時期:

 各々、オフセット印刷A5100頁程度で企画しています。

 発刊時期は、2019/08/12、C96コミックマーケット(日曜日 西け31b)です。

 是非お気軽にご参加ください。

 

(2)募集原稿様式

a. 文字数:

 ①論評・批評 : 2000字程度から15000字程度まで。

 ②作品紹介・コラム:300字程度から1200字程度まで。

b. 形式

 .txt または .doc

c. 締め切り

 最終稿:2019/07/21(日)

 (※ 7月初旬にドラフト段階のものでもいただいてやりとりできましたら幸いです)

 (※ 個別に連絡いただけましたら延長することは可能です)

d. 送り先

 anime_critique@yahoo.co.jp

 ※ 参加可能性がありましたら、あらかじめご連絡いただけましたら幸いです。その際、書きたい作品、テーマ、内容についてお知らせくださると、なお助かります。

 ※ 原稿内容について、編集とのやりとりが発生することにつき、ご了承ください。

(3)進呈

寄稿いただいた方には、新刊本誌を進呈(※ 進呈冊数は2を予定)させていただきます。

 

3、趣旨文:バグ号発刊にあたって

 

 

ダイクストラという人をご存じだろうか。ダイクストラは1930年オランダ生まれの計算機科学者で、 現在はテキサス大学にいる。ダイクストラは「構造化プログラミング」の提唱者であり、 現代のプログラマはこの人の名前を忘れてはいけないほど重要な人物である。その偉大なダイクストラがこんなことを述べている。「バグと呼ぶな。エラーと呼べ」 つまり、プログラマにとって非常になじみ深い「バグ」という言葉を使わないようにしろと言っているのである。「バグ」という言葉を使うかわりに「エラー」すなわち「誤り」という 言葉を使うように提案しているのである。ダイクストラの理由はこうだ。「バグ」という言い方は、あたかもプログラムの誤りがプログラマの見ていないうちに 自然に入り込んでくるような錯覚を起こしやすい。もちろん、 プログラムの誤りは自然発生するわけでもないし、プログラマがよそ見をしている間にのそのそとプログラム中に忍び込んでくるわけでもない。プログラムの誤りは、 プログラマ自身が作り込んだものなのだ。 「バグ」という言葉はこの厳しい事実を覆いかくしてしまうのである。ダイクストラはこのように主張する。(中略)

もっとも危険なバグとは、実はプログラム上の誤りではない。 もっとも危険な誤りはプログラマの意識の上の誤りである。 プログラムの誤りはいつの間にか入り込むものだという誤解こそ何よりこわいものなのである。バグはプログラムの中ではなく、プログラマの頭の中にいたのである。

結城浩, 1991330日, Oh!PC所収)

 

上記のダイクストラ発言のいわんとすること、その文脈は十分理解できる。

プログラムの誤りという意味での「バグ」というのは徹頭徹尾、人為の所産であり、後から混入した外在的なものではなく、それゆえにプログラマー責任の下にある(責任追及のための因果的起点は、まさに物理的にバグを生み出した設計者・製造者にある)、「ロボットに倫理を教えること」はできない、それに尽きる、というわけだ。

 

その文脈が必要とされた理由も、その風土も、もちろん理解できる。しかし、この文脈が限定的であることもまた十分に理解可能である。それは、何者かに責任を求める文脈を除いては、現に起こっている事態を記述するには、貧弱な道具立しか与えない。

 

例えば、人の手による制作を超えた政策について、「バグ」と「エラー」を、結果としての成果物から峻別することはほぼナンセンスである。

 

その成果物は、もとより、人間と(技術)環境が複合した所産である。

 

例えば、時を超える都市の同一性/逸脱についても、何も示しはしない。一つ以上の記述を内包する変形には、可塑的な歴史が折りたたまれる。

 

これを我々の認知の問題として検討してみる。

我々の認知能力側にあるイレギュラーなものの「レギュラー」としての認知についても、「バグ」を「エラー」へと置き換える用語法は、おおよそ何も示してはくれない。

 

私たちは、この点において、「私たちにとっての自然」を構築しつつある。錯覚であり、認識でもあるものとして。

 

制作においてもこれと並行的な取り組みは見て取れる。

 

かくして、リアルタイムの制作という理念が実現されつつあるように見える。

 

さて、今一度「バグ」に戻れば、"First actual case of bug being found."の逸話はあまりにも有名である。そこでは「バグ」とはプログラム上のエラーそのものではなく、作動を中断させ、あるいは別方向へと逸らす現象一般(およびその原因)を指す語として流通する。バグは、責任帰属以前の、我々の認識を新たにさせる経験として、バグはそこに(そこかしこに)現れる。

 

他にも、例えばゲームにおいて、我々はむしろ、そのバグすらも理解しようとし、そのバグを前提とした上で、その限定空間における最適解を発見したりすることも、ここで思い起こせるだろう。

「I hate this game」をプレイ。画面に出る言葉をヒントに男をドアに導くがそのバリエーションが異常に豊富&柔軟‼️QRコードを読んでパスワードを得たりウィンドウを最小化しないと行けない箇所があったりゲームを鮮やかに解体して新しい見事なルールを大量に提示する大傑作🔥https://t.co/wYIkqN3vXq pic.twitter.com/6FmqtAGCto

— ソーシキ博士 (@soshikihakase) May 21, 2019

「あなたのバグはどこから?」というわけだ。そこには、近時語られる「アニメーションの原形質性」という解釈枠組みとは別の、評価枠組みが現れる。

わたくしには、ここ最近のアニメーション研究における原形質性神話の解体のようにも聞こえました。巨大な鍋と期待するハイジと無視するおんじというCM前のカットから生まれるサスペンスを指摘されてましたので。

— 長谷正人 (@mtokijirou) May 27, 2019

(内在的なエラーかそうでないか、過失か無過失か、集団か個人かも問うことなく、「イレギュラー/リスク」が顕在化した時、我々は「バグった」という言葉を頻繁に用いている。このことの含意は大きい。)

 

 

状況論的にも、デジタルツイン/IoT時代の現代においては、リアルスケープ(現実空間)とインフォスケープ(情報空間)はますます相互依存的になりつつある。それとともに、「エラー」ならざるバグの領域はますます拡張しつつある。つまりは、我々ならざる行為者の所産を、自然として引き受けよという指令として、バグの領域は拡張しつつある。

そこに、新たな自然が発生するのは、文字通り自然である。

クロノ・トリガー』や『ペルソナ5』から影響を受けたという海外産JRPG『Cris Tales』。その体験版が6月24日まで配信中!過去・現在・未来が同時に見えるようになった少女の物語を描く https://t.co/EX8mqeob9K pic.twitter.com/ajMRN7QgK0

— IGN Japan (@IGNJapan) June 12, 2019

 

そうした想像力の行く先は、例えばlain, 電脳コイルにはじまり、ケムリクサに連なる90年代-10年代の本邦アニメの中で繰り返し描かれ、洗練されてきた。時に、サイバースペースへのハッキングと同時に描かれる精神世界での「解決」は、アニメ的想像力が外部の技術環境とともに拡張しつつある自体を示している。

他方、そうしたバグをあからさまに制作に取り入れる一群の作家もいる。(例えば、現代アニメーションの礎とも言えるマクラレンに始まり、NikitaDIAKURもまた、その一人である)

 

 

人為と自然は厳密に峻別できるものではない。人(あるいは人工物)が介在したとしても、自然的所産・自然的作用の可能性は拭いされるものではない。一人の人間の中においても、または集団制作の中においても、こうした観察レベルの融和は常に働いている。ましてや責任の語法抜きには、「バグ」とそうではない「エラー」の差はごく小さなものとなるはずである。

 

以上、こうしたバグという語の持つ、人為と自然の差異、(時間的、経済的によって)限定された環境と拡張された環境の差異を踏まえて、アニメ/アニメーション(制作・映像・視聴)における「バグ」というものの混入・利用(転用)・表象にはいかなるヴァリエーションがあるのか? それが現れた作品にはいかなるものがあるのか? 我々はバグ的なものにいかなる情動を掻き立てられるのか?

 

寄稿者に検討を依頼したい点はここにある。

 

 

 

 

 

 

こうしたハッキング的なもの=バグ的なものに対して、我々はいかに向き合えば良いのか。単なる平板なものへの希求ではおそらく足りない。そこには不可避的に政治的な問題が付随する。

murashit on Twitter: "TRIPLE HがSpotifyにぎゅうぎゅうに箱詰めされている様子です… "

 

我々に見えているものは何か。ナグが排除された状態とはなにか。反対に、バグが排除されないという状況において、目の前にあるものとは何か。「見えるものと見えないもの」。その現代的な形が問われている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

--------素材

音楽

現実

周防周 on Twitter: "夢見りあむは鳩羽つぐが動画をupし始めたとき感じた他のVtuberとは違った虚構と現実のズレに似ていて、入力も出力も結局は虚構なんだけど間に一つ現実が挟まっているんだよな。"

部分

ヴァーチャル・リアリティ

 projection mapping

 ヘッドアップディスプレイ

ロトスコープ

自律性

廃墟

ケムリクサ 

時間(速さ遅さ/過去未来)

批評