寄稿募集(11/30〆切):アニクリ 2021冬号 vol.12 特集「ジャンルのリフレーミング/ゴジラS.Pから劇場版 少女歌劇レビュースタァライトまで」(仮) #C99
......諸ジャンルを混交しないことは不可能だとしたら? そのうえ、法 [掟] そのもののうちに住み着いている不純さの法 [掟] 、汚染の原理というものがあるとしたら? それに法 [掟] の存在可能性の条件とは、(法に対して)対抗的である法がアプリオリに存在すること、意味、秩序、理性を狂気に陥らせるだろう不可能性の公準がアプリオリに存在することであるとしたら?
ジャック・デリダ「ジャンルの掟」(若森栄樹 訳)『境域』368頁
1、vol.5s 検討・寄稿募集作品(例)
「ジャンル」についての何らかの言及(作品内であれ、受容環境であれ...)を含む作品群/批評を、主たる対象とする。2020-2021の例であるものの、下記の作品群を念頭に自由に選んでいただきたい(※限定する趣旨ではないことにご留意を)。
(1)ジャンルの操作/自己言及:メタジャンル/ アンチジャンル
・ゴジラ S.P<シンギュラポイント>
・Sonny Boy
・TENET
・シャドーハウス
・逆転世界ノ電池少女
・かぎなど
・不滅のあなたへ
・サイダーのように言葉が湧き上がる
・BEASTARS
・オッドタクシー
・呪術廻戦
・炎炎ノ消防隊
(2)ジャンルの歴史化
・シン・エヴァンゲリオン
・ひぐらしのなく頃に業/ひぐらしのなく頃に卒
・マブラヴ オルタネイティヴ
・機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
・ルパン三世 PART6
・進撃の巨人
・SSSS.DYNAZENON
・NOMAD メガロボクス2
(3)対象のジャンル化/ジャンルの横断:シリーズ/リメイク
・劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト
・かげきしょうじょ!!
・美少年探偵団
・さらざんまい
・波よ聞いてくれ
・荒ぶる季節の乙女どもよ。
・アサルトリリィ Bouquet
・マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 2nd SEASON -覚醒前夜-
・ぼくたちのリメイク
・無職転生 ~異世界行ったら本気だす~
・蜘蛛ですが、なにか?
・裏世界ピクニック
・映像研には手を出すな!
(4)政治性-土地性の中のジャンル開拓
・アズールレーン びそくぜんしんっ!
・ラブライブ!スーパースター!!
・ゴールデンカムイ
・ゾンビランドサガ リベンジ
・どうにかなる日々
・イジらないで、長瀞さん
・からかい上手の高木さん
・スーパーカブ
・異種族レビュアーズ
2、寄稿募集要項
(1)装丁・発刊時期:
オフセット印刷、A5、100頁程度で企画しています。
発刊時期は、2021/12/29、C99 冬コミにて発刊予定です。
(2)募集原稿様式
a. 文字数:
①論評・批評 : 1600字程度から20000字程度まで。
②作品紹介・コラム:300字程度から1600字程度まで。
③掌編小説 : 2400字以内
b. 形式
.txt または .doc
c. 締め切り
①第一稿:2021/ 11/30(火)
(※ 第一稿に、自身で納得いかない場合には、ドラフトまたは納得いかない点を送付くださいましたら一緒に考えられますので、よろしくお願いいたします。)
②最終稿:2021/12/15(土)
③相互コメントやりとり期間:②までの期間・随時 @dropboxほか
(※ いずれも個別に連絡いただけましたら延長することは可能ですが、大幅な延長につきましては相当の期間前に相談くださいましたら幸いです。)
d. 送り先
anime_critique@yahoo.co.jp
※ 参加可能性がありましたら、あらかじめご連絡いただけましたら幸いです。その際、書きたい作品、テーマ、内容についてお知らせくださると、なお助かります。
※ 原稿内容について、編集とのやりとりが発生することにつき、ご了承ください。
(3)進呈
寄稿いただいた方には、本誌2冊を進呈させていただきます。
3、発刊趣旨・募集趣旨
今号では「ジャンル」という言葉を導きの糸とし、広く深夜アニメ・劇場アニメ作品について批評・評論を募集したい。ただしここでは、特定の作品について、厳密なジャンルの特定を志向したり、特定基準の明示化それ自体を目的にしたものではない。
広く「ジャンル」の先入見なしにはあらゆるアニメ作品は(素朴にさえ)見れないことは明らかであるが、決して個々の作品は特定ジャンルにすっぽり取り込まれてしまうわけではない......ジャンルはこの意味で生態的であり、たえず別ジャンルと接しており混交しつつあるし、ある境界を持つ(とされる)「作品」の単位とは独立して、受容側からも直接に名指しえ、発見しえ、生成しうる点で独特の境域(parage)をなす。
今号ではこのジャンルの生態について作品を通じて再考するという意味で、「ジャンルのリフレーミング」を掲げ、制作側・受容側の双方からアプローチできる視聴の条件・環境について、寄稿者と読者の皆さんとともに考えたい。
1.)
例えば、配信サイト・dアニメの「アニメジャンル一覧」を例にとれば、SF/ファンタジーものから、ロボット/メカもの、アクション/バトルもの、コメディ/ギャグもの、恋愛/ラブコメもの、日常/ほのぼのもの......などなど各種のジャンルが既に用意されている。これら商業-流通上のジャンルは、より内容面に立ち入ってみればジャンル混交的であることにはすぐにわかる(魔法少女ものはどこに位置するのか?戦闘少女ものとの差異とは?『魔法少女まどか☆マギカ』以降のジャンル変化とは...? ...... あるいはタイトルそのものが各話それぞれでの即興的ジャンル混交を示している『カウボーイ・ビバップ』はどうか?......などなど)。既存のジャンルを越え出ること自体、驚きや解釈を誘うものである以上は、固定化されたジャンルとは(「あー、あれね」という理解の入り口をなすとともに)乗り越えられるべき背景であることは自明である。
他方で、ニコニコ動画のタグのようにある種の自生性を持つジャンル化の作用をもってしても、この流動性を捉えられるかと言えばそれもまた難しい。消費のサイクルが激しいTVアニメでは、ジャンルを付与する作用自体もまた一過的な空気感で命名され、しかし明確な定義も持続的な継承も制度的にされることはない。この悪循環によって、タグの収束や忘却が進行してしまう結果となることもしばしばである。(例えばかつての呼称である「空気系」を作品レベルで継承する群を特定することは難しいように...)
2.)
しかしながら、特に現在の深夜アニメの一部作品においては、このジャンルそのものの拡散とともに、作品そのものにジャンル性への関心が強くたたみ込まれているようにも見える。たとえば『ゴジラS.P』は、長年にわたるゴジラシリーズの遺産/負債の上で(特におそらく『シン・ゴジラ』を強く意識した上で)、SF的な伝統とファンタジー的な伝統を織り交ぜた作品であるし、『Sonny Boy』もまた青春群像劇のガワを借りて、メタジャンル的な世界移動をギャグテイストに落とし込まないギリギリで留めた稀有な作品である。また『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』と『かげきしょうじょ!!』を並べたときに、同じ歌劇への言及の裏で、表現形式としては全く別の志向を持つ(例えば前者は「観客」の観客たる地位を揺らがせる点に焦点を当て、後者は「演者」の演者たるが故の苦悩にスポットを当てる)点も興味深い。
このように2020−2021における幾つかの作品は、ジャンルを特定したり横にずらしたりする構造や支配力のバランスそのものを、既にメタジャンル的な関心を制作-受容環境の中に取り込んでいるように見える。今号の寄稿募集の主たる関心はここにある。
3.)
もちろん、2020−2021における幾つかの作品といったものの、そのうちのあるものは商業的な事情に由来するのかもしれないし(お仕事もの、飯もの、アウトドアもの等々 所謂「趣味もの」はどうか? 個別作品・対象レベルで一つのジャンルを形成してしまう力を持つ「シリーズ」もの、あるいはシリーズ手前の「リメイク」ものはどうか?)、あるいは受容者の生活スタイル/趣味の拡散という多様性を踏まえた(再帰的な)作用かもしれない。
しかし他方で、解釈レベルで複数のジャンルを移動/操作する(その異化効果を利用する)「メタジャンル」ものも隆盛しているように見える。さらには、「東アジア圏におけるゼロ年代批評を振り返る会」(2021/10/23)で論点として上がったように、ゼロ年代後期(2006-2011)におけるメタジャンル群としての「ゼロ年代批評を取り込んだ(かのような)作品群」は、決してゼロ年代後期特有の事情ではなく、むしろ現在まで拡大を続けている現象でもあるように思える。
この運動に、制作/製作環境、社会/受容環境の双方から光を当てることが、寄稿募集の主たる狙いである。
4.)
なお編者としては、具体的な作品について「ジャンル」との取り組みを見ることによって、2021の現在においてアニメ批評を行うという営為についても反照的に明らかにしたいという期待をもって寄稿文を募集している。
(批評的なものに親しんでいる)誰しもが、とある作品について何らかの違和感を覚えた際、まずはその違和感を背景となる(既存の/新たな)ジャンルを探り、可能的な(複数の)ジャンルの中から適切なコンテクストを選び、規定のジャンルとは異なるジャンルを付与する作業に、自然と従事しているはずである(不完全であれmake-believeとはこの作業のことではないか?)。ある意味では、批評とは「ジャンルの細分化」作業と「ジャンルの発見」作業の往復作業とさえ言えるかもしれない。
しかし残念なことに、この「ジャンル」なるものは、ファンコミュニティが自己集団を防衛するための道具にも用いられたり、あるいは(PCや表現の自由などの旗印をベースに)「ジャンル」を解さない人との間で粗雑なレスバを生み出したりすることも多々ある。歴史的にもジャンル開拓にはつきものであったし、(例えばいわゆる「エッチ絵」的なものを念頭に置くならば)その筆致を生み出してきた、元の文脈が忘れられ、現在の消費スタイルのみによって、わずかならざる誤解を含む非難を浴びたりすることもあるかもしれない。特にコロナ禍を経た現在、国を跨いだアニメ視聴・配信環境が整備の方向に向かう中、国境を越えた作品のコンテクストを踏まえた取り扱いは、より重要性を増しているだろう。
それでもなお、単に「ジャンル違い」を過度に忌避するのではなく、作品の可能性の中心を探るための基礎となるジャンル特定/生成的な営為についての議論を開きたいと考えている。寄せられた寄稿文と今号の発刊を超えて、発刊後、継続的に研究会(たまけん2022例会)のテーマとして練り上げていきたいとも考えている。
以上を一言でまとめれば、「特定の作品に(自明ではない)ジャンルを見出したり、別のジャンルへと接続することで、作品に位置(価値)を与える」という批評の役割について検討したいというのが、(編者としては裏の)目的にある。この辺りに関心がある諸氏にもぜひご参加願いたい。
以上