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医事法関連記事(補足)

ありがたいことに某所で医事法(というか医師の労働環境)関連の連載記事を持たせてもらっていたのですが、第一回第二回に続く第三回の連載時に、DPA制度に関する脚注11及び脚注10が諸事情により抜けてしまっておりましたので(※)、以下補足させていただきます。

 

1、脚注11関係

 

脚注11は、責任限定のいくつかの方法に関する議論に関し、そのうちの一例として、主に企業の経済犯罪について導入されてきつつある訴訟延期合意=DPA(Deferred prosecution agreements)制度の概要を紹介するという注記となります。以下、本文該当箇所と内容です。

 

近時論じられつつある体制整備責任に関する議論(脚注10)や、(改正)刑事訴訟法における捜査・公判協⼒型協議・合意制度に係るDPA(Deferred Prosecution Agreement)に係る議論(脚注11)も、個々の事例に基づき責任の分散を模索する⼀例として把握し得る。

上記第三回記事より抜粋)

  • (脚注11)DPAとは、主に経済関連の企業犯罪において、被告人側が合意期間中、制裁金などの金銭的義務と捜査協力を奨励する非金銭的義務を合意した上で、合意にしたがっている限りは刑事訴追を延期し、最終的に刑事処罰を見送るとする制度を指す。現在までアメリカ、イギリス、フランス、オーストラリアにおいて導入され、「司法取引」の一部をなす。日本でも2016年の刑事訴訟法の改正に伴い、財政経済関係犯罪及び薬物銃器犯罪など特定の犯罪について合意制度が導入された(改正刑訴法第350条の2第1項、第2項、第350条の3)ことに加え、刑事免責制度も一部導入された(同法第157条の2)。ただし、DPA制度そのものの導入には至っていない。上記犯罪のみならず、医療事故調査制度における免責にかかる議論とともに医師の働き方に関する議論についても、かかる制度の利点は検討に値する。

 

2014年初頭にイギリスで、2016年末にフランスで、そして丁度この2017年12月初頭にオーストラリアで導入されたということで、動向を注視して行きたいところではあります。

以下、いずれも今月出ましたオーストラリアのDPA制度の導入に関する記事と、フランスのDPA制度の適用に関する記事を紹介します。

 

(1)オーストラリアのDPA制度の導入について

kyc360.com

www.lawyersweekly.com.au

www.mondaq.com

 

 (2)フランスのDPA制度の適用事例について

www.cdr-news.com

 

France Announces Its First Deferred Prosecution Agreement | Skadden, Arps, Slate, Meagher & Flom LLP - JDSupra

 

もちろん、こうした責任限定についての議論を他分野に拡張できるか、というのは要検討事項ですが、事故調査周りの議論とは親和性が高いのではないかと思われます。今後さらに検討していきたいと思います。

 

最後ですが、同制度の一般的情報に関しては下記が参考になると思います。

ci.nii.ac.jp

 

 

2、脚注10関係

 

もう一つ抜けてしまっておりました脚注10は下記の通り、文献参照を促す脚注です。

  • (脚注10)体制整備責任を責任限定と結びつける見解については、例えば松本伸也「責任限定法理として機能する内部統制システム」『現代企業法の理論と動態 奥島孝康先生古稀記念論文集第1巻《上篇》』成文堂、2011年を参照せよ。

 

 

 

※以上の経緯としましては、「同脚注については編集側の理解が及んでいないので削除する」旨のコメントをいただいた経緯があります。

 先方の編集の方に期限超過で送りつけてしまったことも相俟っての結果(もうしわけありません)とはいえ、脚注だけ飛ばすというのはあまりにも記事執筆者として無責任となってしまいますので、こちらで補足させていただくこととさせていただきました。

 

 

以上