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書肆短評

本と映像の短評・思考素材置き場

C90『アニメクリティーク vol.4.5 ガルパン特集号』記事紹介 Column 03. 注解(コンメンタール)戦車戦規則 #c90

(4.5目次など詳細情報は下記リンクにて)

nag-nay.hatenablog.com

 

上記アニクリ新号では、本編評論に加え、レビューコメント、コラムの充実を図っております。

テーマコラムは結果として11となりました。

以下は、1章にある3番目コラム「注解(コンメンタール)戦車戦規則」です。ご笑覧ください。

 

 

Column 03. 注解(コンメンタール)戦車戦規則

 

 劇場版における大学選抜戦の戦車戦規則を検討する。主として検討するのは「戦車同公式試合規則〈高校生大会の規則〉」(以下「高規」とする。)、「廃校撤回念書」(以下「念書」とする。)である。

 

1、競技準備に関する規則

 

1-1 戦車登録

 

(1)使用可能車輌

使用可能車輌については、 「1945年8月15日までに設計が完了し、試作に着手していた車輌と、同時期にそれらに搭載される予定だった部材のみを使用した車輌」に限定される[高規3-01]。この制限以外には車輌種類に関する制限はなく、認可済車輌であればおよそ全て使用可能である。ただし、装備規定、とりわけ競技者保護のための安全対策(いわゆる「特殊カーボン」)規定により、オープントップの戦車は原則として使用できない[高規3-02]。大学選抜戦におけるカール自走臼砲は、通常使用であれば15人程度の人員が砲塔後部において装填を実施しなければならないものの、自動装填装置を装備していたことから、操縦手以外には屋外活動を展開するものは存在しなかったものと推察される。ここから、規定の趣旨に基づき「(オープントップでも)考え方次第でしょう」とする文科省学園艦局長の発言に繋がったものと理解しうる。

(2)車輌事前告知 

以上に加え、時間的な制約としては、参加車輌については原則として48時間以内に連盟に提出された後、相手チームに告知される[高規2-01]。告知の趣旨を実効的にするため、48時間内における認可車輌以外は使用不可能である[同上]。この点につき、大学選抜戦においては、「試合直前の認可」という言葉が用いられているが、おそらくは念書を交わした後、試合開始までには少なくとも2日以上7日以内[念書第3条]のタイムラグが存在したものと思われる。
 ただし、後述するように大学選抜戦においては重戦車T28やカール自走臼砲の存在は各々の会敵時に判明したことからわかるように、念書第4条に基づき、主催者権限により、競技者、参加車輌を記したメンバー表は交付されていなかったものと考えられる[高規2-01, 念書第4条]。
 翻ってこの点が大洗女子学園にとっても奏功し、直前のメンバー追加を可能としたことは見て取りやすいところである。また、戦車種類についても「参加チーム」のものであれば足り[高規2-01]、必ずしも学園所有の車輌であることは要件とされていない。よって、クッション、ミルクセーキの材料、紅茶セットなどの持ち込みと同様に、戦車自体も「私物」として直前登録が可能である。

(3)車輌数制限
 他、明文の規定が存在するのは車輌数制限[高規2-02]だけであるが、連盟の指定に基づくものであり、上限は定められていない。大学選抜戦においては、念書第4条により「30輌」であることは事前に主催者より通知されていた。このことから、大洗女子学園チームの30輌を超えた知波単学園の16輌は待機することとなった。

 

1-2 参加者登録

 参加者は「参加チーム」に属するものであれば足りる。事実上は学園艦ごとにチームが分別されているため、原則として同校の生徒は別の「参加チーム」には配属されず[『アリス・ウォー』を参照]、反対に他校の生徒は同じ「参加チーム」にはなれない。ただし、廃艦命令後の人員移動指示にあるとおり、学園艦相互の人員移動も生徒会決裁により柔軟に行われることから、黒森峰ほか各高校の短期入学手続が可能となった。
 その他、参加者に関する要件は戦車と同様に原則として48時間前の事前告知が求められるものの、大学選抜戦においては、念書第4条により事前告知は不要とされていたため、「参加チーム」の増員が認められた。
 その他、年齢要件・身体要件などについても明文の規定は存在せず、免許取得及び安全管理[高規3-02]がなされうる以上は島田愛里寿のような若年者でも参加可能である。

 

1-3 実施要項

(1)殲滅戦、フラッグ戦 

殲滅戦は「相手方の車輌全て」「競技続行不能」[高規1-02]、すなわち「競技資格喪失」[高規4-02]にすることによって、勝敗を決する試合形式である[高規1-01]。「競技資格喪失」は、判定装置(いわゆる白旗)[高規3-02]に加えて、審判員により続行不能と判断されることで成立する。修理補給が可能である限り、車輌故障は続行可能である。[高規4-03]

(2)時間・場所等に関する決定権者

主催者が決する。高校生大会については原則として連盟[高規2-01]が決するものの、個別の事案に応じる。

(3)補償 

競技区域内で発生した建造物、路面などの原状回復については連盟が補償する[高規6]。エキシビジョンにおいては、大洗町役場をはじめとして、割烹旅館 肴屋本店及び大洗シーサイドホテル並びにアクアワールド茨城県大洗水族館が次々と破壊されたが、これらはいずれも高校生大会のため全て補償の対象となる。
 これに対して、大学選抜戦については文科省預かりの事案ゆえに、参加者は使用許可地の維持に関して善管注意義務を負い、義務違反によって賠償責任を課されていた[念書第6条、第17条]。ただし、この点については違憲の疑いがある。

 

 

2、競技開始時、競技開始後の規則

 

2-1 開始号令、再開号令

 競技者は、審判員の開始号令とともに競技場に侵入し、中止号令によって、双方の根拠地に後退する[高規4-01]。大学選抜戦冒頭、「待ったー!」の掛け声で黒森峰が乱入した時、すでに開始号令は発されていたが、事実上の試合開始は再開号令時であるため、開始号令後再開号令前の段階においてもメンバー追加が可能となった。
 なお、メンバー追加に関する異議申し立てについては後述する。

 

2-2 アピール権、異議申立て

 競技資格喪失条件[高規4-04]に該当する車輌については、車長は審判に対して、競技資格喪失の撤回をアピールすることができる[高規4-05]。このアピール権は、列挙事項である競技資格喪失に該当する場合でなければ行使できない。しかし、①アピール権の趣旨が資格喪失者の保護と相手方の利益の均衡を図る趣旨にあること(5分以内ルール)、②競技資格喪失条件[高規4-04]には専ら競技続行不能事由のみが列挙され、禁止行為による失格条件[高規5]には危険行為・不品位行為が列挙されていることに鑑みれば、競技資格喪失条件に準ずる場合であれば相手方の了承を得ることによって、利益の均衡を図ることは可能である。また文面上も、明確な「規則違反」が認定されていない場面[高規4-04]において、相手方に申し立ての機会を与え、アピール権行使の前段階としての調整を行うことには一定の合理性が認められる。
 大学選抜戦において、審判である蝶野が「異議を唱えられるのは相手チームだけです」と述べた趣旨はここにある。

 

2-3 禁止行為

 禁止行為[高規5]には、危険行為として指定された以外の用具・部材の使用、競技区域からの離脱、人間への発砲、競技続行不能車両への発砲があげられる。不品位行為としては、審判員・競技者への非礼な言動、無気力試合がある。いずれの行為を行ったものも、試合続行不能ではなく失格となる。
 本件では、モーター規定の不整備をついて改造車輌が用いられていたが、連盟が事前に認めたものではない以上、おそらくは参加車輌規定における部材組み合わせ[高規3-01]で対応したものと考えられる。ただし、規定上は本来は参加車輌規定但書[高規3-01]に基づき連盟の認可を求めるべきであった事案であり、禁止行為と解釈する余地も十分にある。

 

以上