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書肆短評

本と映像の短評・思考素材置き場

3/24「変貌するコーポレート・ガバナンス構造」シンポジウム

コーポレート・ガバナンスについてのこの頃の動向


以下、竹橋でおこなれていたコーポレート・ガバナンス シンポジウム「変貌するコーポレート・ガバナンス構造と日本企業の針路」についての記録・雑記。


関係資料

コーポレートガバナンスコード www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20150305-1/04.pdf 

伊藤レポート www.meti.go.jp/press/2014/08/20140806002/20140806002.html


 

第1、基調講演「持続的成長への変革シナリオ---「伊藤レポート」が訴えるもの」


(1) 「変革」の大きな見取り図


1−1−1. 問題点:コードの策定、コード文言への過度な注目?

・グランドヴィジョンとしての「伊藤レポート」の意義。
・コーポレート・ガバナンスの議論への性格変化
→ compliance or explain の精神の実現としての「変革着手の順序」

1−1−2. 既存取組み:本格化してきた市場改革・企業改革

東証企業価値向上表彰制度の創設(ほか「攻めのIT」など)
・JPX日経400
・なでしこ銘柄
 ...
コーポレートガバナンスコード、などなど
 ↓
目標としての企業価値向上:「稼ぐ力」「資本効率性」「ROE」「対話」

1−1−3. 脱却順序:不都合な現実からの脱却の「順序」
 
①不都合な現実の直視
 ・イノベーションと持続的低収益性という日本型パラドックス
 ・ROE低位の理由としての「利益率」低位(回転率、レバレッジはとんとん)
 ・顧客市場重視と株式市場・資本市場軽視という非対称
 →生産環境の「生産性」、資本市場における「生産性」のギャップ
②スチュワートシップコード + 日本再興戦略 + コーポレートガバナンスコード(2015/6)
③プロセス戦略
 →「対話」実効化のための負担軽減・促進のための取り組み
 ・株主総会あり方分科会
 ・企業情報開示検討分科会
 ・Management Investor Forum
 →手段の目的化に落ちいらない「対話」とは何か?自節へ


(2) 伊藤レポートと「攻めのガバナンス」


1−2−1. 経緯

2013: 持続的成長への競争力とインセンティブプロジェクト設置
2013: 中間報告
2014: 伊藤レポート(金融資産等ストックの課題への危機感の払拭)
 反響1: ROE8%を求める変革としての評価
 反響2: ISSポリシー改定(5%以下の企業への反対票)
 対応1: エビデンスベースドな戦略(インベストメント・チェーン)
 対応2: 諸アクターへの課題
 対応3: 企業価値の見方(株主価値以外の価値を視野に入れた見方)
  
1−2−2. 変革シナリオ

イノベーション創出+高収益率の持続、ESG情報・統合+高収益性の持続の両立
②企業と投資家の「協創」(ex.「保証なき商品を売る」つもりと明言した日立モデル)
③資本コストを上回るROE、資本効率革命
 Q.) なぜROEなのか?自社株買いなど分母を小さくしてしまう戦略が蔓延るのではないか?
 A.) それはROEの解釈がまずい。回転率・レバレッジ・利益率の総和。これに着眼した戦略が必要
④情報提供としての従来型IRからの脱却、相手型立場の理解のための「対話」促進
・ストーリーテリング、理解・共感の過程、エンゲージメント・アジェンダ
・投資家が企業を選ぶとともに、企業が投資家を選ぶ。機関投資家の「選別」も必要。

1−2−3. コーポレートガバナンス改革の方向性

 ①短期利益戦略への注力からの脱却
 ②株式保有期間の短期化からの脱却
 ③中長期的な企業価値向上
 →手段が目的化したガバナンスではなく、着地点を見据えるという意味での「攻めのガバナンス」
 →市場という「他律」とともにある「自律」の要としのCEO・CFOの擁立 
 →「目的を見据えた対応」へ:macro-microの共同:企業価値向上という目的の共有
  ・macro: 経営者投資家Forum
  ・micro: 社外取締役・CFO・、投資家

 

第2、講演


(1) 花崎「コーポレート・ガバナンス」


2−1−1. コーポレートガバナンスにおける「株主支配論」?

コーポレートガバナンスの必要性
 近代企業における所有と支配の分離のために、株主利益に沿った経営をさせるかをモニターしなければならない。
コーポレートガバナンスの方法
 モニタリング、インセンティブ設計(ストックオプション、夫妻による規律)、
 株主支配(委任状争奪、M&A、業務部門切り離し、などなど)
・日本におけるコーポレートガバナンス
 コアの社員の影響力としての「労働者管理企業」

2−1−2. 「支配」の所在から「分配」の原理へ

・市場競争を通じたガバナンス・メカニズム
 当局・銀行・市場・企業という諸ステークホルダーとともに「競争原理」による統制が働いてる。
・Tirole「余剰合計の最大化・分配」としてのステイクホルダー・ソサイエティ論
・企業内、企業外のCSR、SRI(Socially Responsibility Investing)の役割

2−1−3. 状況と展望

・株式所有構造の変化(外国企業の参入)
・社会取締役の変遷、委員会設置会社の変遷
→展望:「多層化するコーポレートガバナンス構造の把握と展望」
 ①目的としてのサステナビリティ
 ②手段としてのステイクホルダー型ガバナンス
 ③内部コントロールメカニズムの構築
 ④資本市場による規律付け
 ⑤金融機関によるモニタリング
 ⑥市場競争要因


(2) 油布「コーポレートガバナンス・コード原案」2015.3解説


2−2−1. ガバナンスコード比較、スチュワードシップコード比較

・プリンシプルベース、説明責任、当局介入を揃えたもの。soft law base
・各国比較(p.140)
 米国では、基本的には株主中心。株主を守るために、(エンロン事件、リーマン事件を踏まえて)
  法令に書きこむことで極めて厳しい規律が働く。rule base
 日本では今回二つのコードを作り上げ、会社法改正と合わせて変更がなされたところ。
 OECD(p.140)では、株主万能主義とは一線を画したもの。日本も概ねOECDを参照している。

2−2−2. 原案
・定義規定:「コーポレートガバナンス」とは、会社が株主を始め顧客・従業員・地域社会などの
  立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを意味する
  (p.1、定義)
・趣旨:成長戦略に軸を置いたガバナンスコードの把握・取り組みがある。
・変更点:「ガバナンス」について、日本においてはブレーキ・モニタリング機能に加えて、
  中長期的な企業価値向上に重点を置いた設計思想を取り入れている(p.2、原案第7項)
 
2−2−3. いくつかの質問への回答

パブリックコメント(p.123以下)
 アカウンタビリティをしっかり行うことによってこそ、経営手腕が働くという認識を背景に、
 「経営陣によるリスクテイクを支える環境整備」についての肯定的意見など


(3) 田村「ガバナンスと稼ぐ力」


2−3−1 問い: 「企業の稼ぐ力を高めるようなガバナンスとはなにか?」

答え方:
①コスト引き下げと資本市場による規律付け
 資本市場規律がきつければ、生産市場規律(=赤字にならない)によるテストだけではなく、
 株主資本コストという二重のテスト(プレッシャー)を受けることになる。
企業価値創造率向上への促し(投下資本拡大×投下資本利益率向上)profitable growth
③人件費前の利益の向上による成長持続性

2−3−2. 企業価値向上と国民国富(GDP)の関係

労働生産性向上のための「労働資本ストック×資本生産性の最大化」
・経営陣への強力なプレッシャーをかける主体としての取締役会とスチュアードシップコードの二重規律
 
 
(4) 佐久間「企業を取り巻く環境とコード」


2−4−1. 様々な環境変化

・生産環境の変化(ex. 製鉄は半分は中国)、人口動態の変化、情報技術の変化
 コーポレートガバナンスの変化と必要の取り組み、企業ごとの変遷
 「どこにでもきく特効薬はない」

2−4−2. 3つの誤解を解く

①誤解1:
 日本のコーポレートガバナンスは米国型ではないから、ガバナンスが不在という誤解は間違い。
 役割の違いをチェックすべき。(ex.業務執行決定が日本では義務)
 そうではなく、独立のガバナンスが必要である、ということ。 
②誤解2:
 積極的成長戦略の中で社外取締役へ過度な期待が寄せられるという誤解。
 社外取締役は業務執行を主体的に行うわけではないので、平時においてはミニマルな役割にとどまる。
③誤解3:
 監査役が機能していないという誤解。
 業務執行、妥当性監査にも踏み込んだ判断をしている。
  
 

第3、パネルディスカッション「変貌するコーポレート・ガバナンス構造と日本企業の針路」


(1) 共通質問①「最近のガバナンスについて、どう評価しているか?」


3−1−1. 花崎

・SSCではエンゲージメントの重要性、CGCではステイクホルダーという重要性といったように、「対話」の広げ方は書いてある。しかし、ここの取締役の判断としては困難が伴う。株主は様々な利益の異質性がある。そのために、株主対応が難しくなることが予想される。
・ではどのように対応すればよいか。長期保有の株主を重視すべきと考える。長期保有には議決権を付与し、短期保有には議決権を付与しないというアイデアがある。
・伊藤講演においても中・長期戦略への対応が求められるのではないか。

3−1−2. 油布

・株主との「対話」は戦略ツールとしてはいいと思っている。理由は、意思決定は事実としてステイクホルダーに囲まれながら行われているわけで、それを可視化させていくことが重要ではないかと言える。equity提供者との「対話」を増やすということが重要ではないかと思う。(原案 p.27)

3−1−3. 田村

・画期的なものとなっている。昔は株主が経営に口を挟むのは、やはり妨げられてきた。株主がむしろ経営に参画すべきだという展開を果たした点で、思想宣言としての意味では非常に重要。
・ガバナンスには形式と実質がある。形式として数を増やしたりするのみならず、「受託者責任」を書いたのも重要。独立社会者会議など、様々な提案がなされている。

3−1−4. 佐久間

・中見については議論はあるだろうが、英・日の比較を踏まえた米国型の実質を踏まえた上で、各企業への自由を残しているという点で重要。最終的には、実行段階での各社の整備までの先鞭をつけたという点が重要。


(2) 共通質問② 標準形を示すソフトローであるわけだが、実行性 enforcement についてはどう考えているのか?


3−2−1. 花崎

・enforcementは、あくまでも経営のスタイルの中で評価されるべきものであり、無理強いをするというわけではない。

3−2−2. 田村

・ガバナンスから企業価値向上という形式的図式で捉えてはいけない。正論として「勉強しろ」というだけでは足りない。テストがないと勉強しない人へのプレッシャー(※ 可視化を踏まえたenforcementの景気)の一つにはなる。

3−2−3. 佐久間

・explainということで、(説明しない場合の不利益からすれば)事実上の拘束を果たすことは予想される。


(3) 共通質問③ 海外投資家のプレゼンスの向上やストックオプションなど所謂「米国型」の制度が実効化する中、ガバナンスの形はどの程度・どのような方向で移行すると考えるか?


3−3−1. 佐久間

・米国型に移行するわけではないが、もちろん、株主との協働の契機は高まる。社内設計思想としては、プロセス重視ものへと移行していくのではないか。

3−3−2. 田村

・米国型が「株主利益重視」というわけではない。エンロンとかはむしろ経営者のお手盛りだった。機関投資家軽視の傾向さえあった。将来収益の現在化を最大化するという方針で、適正な判断をなすようにうながされている。米国では長期的利益を取り込んだ判断をなしている。「顧客のための価値創造、株主のための価値創造」という順番を定めていることの意味を考える。
・「啓発された株主価値」という議論が出ていることの意味を検討していくべき。筋のよい株主利益、という考え方を導入してほしい。

3−3−3. 油布

・この頃のトレンド変更を見るに、確かに着地点は一緒になるのかなと考えている。

3−3−4. 花崎

・2000年代移行、配当を削るより先に賃金を削ったりする企業が増えた。この問題は注視する必要がある。
・株主主権の過度の強調から離れるのにも利点があるとはいえ、企業経営者の外部規律からの遮断(entrenchment)は望ましくない。規律づけによる企業の責任投資を促していくことで、財務パフォーマンスを「社会性」「サステナビリティ」に根ざさせるべきなのではないかと考えている、

Q.) 株主利益追求のみというよりは「共同利益」の追求が前提だとはいえるのだが、その利益衝突場面ではどう考えたらよいのか?
A.) 企業の経営者・株主には、経済社会のサステナビリティを踏まえた経営に向かっていってほしいということは確認したい。


(4) 会場質問


Q1.) 原案では取締役会(p.20)は米国型に見えるのだが、本当に監視型ガバナンスが効くのだろうか?
A1.) 油布回答:場所的には4−2というよりは4−3がいいと思われるが、その上で。
 現状にあっていないという指摘であったが、基本的な取締役には自分の立場と切り離した立場を規範的に要請しているとは思っている。(実際には代表権剥奪とかは難しいと思うが。)

Q2.) 企業のガバナンスというより、機関投資家に対するガバナンスは効かせられるのか?
A1.) 油布回答:上場会社としての規律という意味は効かせられると思う。資金提要者が「劣悪」かどうかは置いておいたとしても、資金提供者への適切な対応は求められるはず。SSCは、それを明文化したもの。

Q3.) 投資家からまともなガバナンスが働くとは言えないのではないか?
A3.) 佐久間回答:
 美人コンテストという要素はあるかもしれないが、株価は最終的には企業価値を表す指標であらねばならない。実質を上げていくことによって対応すべきだと思う。

 
(5) まとめ


3−5−1. 花崎

公的年金運用法人の運用目標を見たりすると、どうしても運用tポリシーなどの策定やガバナンスに機関投資家の役割が発揮されるべきだと考えている。


3−5−2. 油布

・ガバナンスコードにおける「対話」は、きちんと合理的な範囲で、前向きな対応を求めるもの。株主の保有率とかで一律に決めたいわけではない。各会社の合理的な範囲、選択を果たしていくことが必要。

3−5−3. 田村

・SSC、SGCにおける「中長期利益」や「持続性」を悪用してはならない。「中長期利益」や「持続性」とは定期試験みたいなもの。定期試験が悪かったら、相手に何かしらの説明を求めはするはず。やりかたと改善方針、チェック方法をきくはず。課題と解決、時限の方針を考えつつ、プランニングするということが重要。

3−5−4. 佐久間

・形式に合わせれば良いというわけではない。「商売人の価値」を中心に据えた上で考えるべき。ただ法や規則に基づいて置くだけでは意味がない。必要性、機能性に応じた社外取締役の職務内容の策定方針をみるべき。


以上。