書肆短評

本と映像の短評・思考素材置き場

5/29 藤村龍至講義 「建築2.0 建築からアーキテクチャへ」メモ取り #genroncafe

【Section1:①芸術の建築か、②工学の建築か?】

 

---日本:社会的な事件が起こると建築家の役割が分岐していく

 

1、1920年代:関東大震災後:

 ①分離派vs.②構造派

 

2、1960年代:巨大建築論争:

 ①アトリエ(建築家)派

 (東京海上ビル:レンガ:配慮ある建築、皇居への配慮)

  vs.②組織

   (設計事務所)派 (新宿三井ビル:ガラス張り:商業主義)

 ※着眼ポイント!:アトリエ(住宅・公共)と組織の分離:棲み分ける批評性

  (1)設計のみならず、その(2)批評レベルでも、担当する者が相互に分離

   ex.)ビールメーカーの諸事例:

    アトリエ派は文化施設を、組織派は生産施設を手がける

 

3、2000年代:グローバリゼーション

 ①デザインアーキテクト

  vs.②設計管理

 ※事例

  ex.)電通ビル:外装はデザインアーキテクトが、設計施工は大林組

 

4、2011年以降

(1)グローバルレベル:

 ①アトリエ=アーティスト

 (海外文化施設など:住居ではない)

  vs.②組織=マスターアーキテクト

   (新興国巨大開発:ヒカリエなど:高密度建築:ex.容積率1600%)

(2)ドメスティックレベル:朽ちるインフラ問題

 ③アトリエ=ソーシャルアーキテクト

 (ワークショップ型:投資総量の減少を調停するための政治的調整問題)

  vs.④組織=エンジニア

   (改修問題:実情としては物理的なインフラを特に止めずに改修する必要性)

 ※着眼ポイント!

  新たに生じてきたレベルとして、②と③の差異に注目!

  (通常みられてきた①-②や③-④の対立ではなく…)

 

 

【Section2:都市】

 

1、諸事例紹介:

  スーパーマーケットからコンビニエンスストア・ショッピングモールへの移行

 

2、着眼ポイント!:「情報」・「ボリューム」

  ex.仙台メディアテークの事例

  (1)伊藤豊雄案:意匠と構造の共同作業が可能になる段階:

   透明なimage、relax出来る場

   『シティ・オブ・ビット』ミッチェル:身体の情報による拡張

  (2)古谷案:短冊状に繋がった各階構造:検索上の空間=迷路状=タグ検索etc…

   →結果的に(2)は図書館側の管理上の理由に基づく反対にあう:コンペ敗退…

   →未解決の問題、としての(2)?:

    ・集積した「つながり」、集積した私的空間、「祭り」空間

     (ex.破滅ラウンジ)

    ・たとえば、ネットカフェ的な空間をどのように位置づけるべきか?

 

3.1、別の事例:シアトル公立図書館(コールハース):公共空間の商業空間化を押し進める方向

  図式的明瞭性(検索可能性)=サーチ

   vs.空間的刺激(錯綜した意外な出会いの発生)=ブラウズ

  →IKEAにおけるこの二面性のラディカルな統合

   ・1F倉庫(サーチ空間)、2F(ショールーム)空間

   ・2Fは単一ルート、1Fはセルフ方式の空間

3.2、更に別の事例:Amazon倉庫

  Amazon倉庫=物流倉庫は、(2)古谷案型の帰結という感じ

  情報端末に出てきたものをピッカーがチェック・ピックする

  到着準に棚におろす仕組み等

 

 ※ショッピング空間の変容

  ネット、と、巨大モール、の共犯関係 

  ・ネット:

  ・巨大モール:

   郊外の物理店舗のメガ化(中小店舗の淘汰を前提に)

   空間的刺激の場

 

4、視点!:大阪万博から大阪ステーションシティへ!

 ex.)大阪万博「お祭り広場」

  郊外の丘陵地利用:万博史上随一の動員数(6400万人)

  日本の大型開発の想定される成功類型(コンテンツ誘致型)になった?

   一方で、

  世界都市博が中止になった事例(動員0人、中止費用610億円)で終焉する

 ex.)大阪ステーションシティ(54万平方メートル:1億3000万人動員)

  コンテンツ誘致型に変わる新たなモデルとして…

  1987年以降、10年越しで、土地利用方法を検討する

  京都駅に始まる開発事業が広がって行く

  既存の商店街がJRの駅を中心に再編成されて行く過程

  導線構造の変更によって(決して特異ではないコンテンツによる)動員を実現する

 

5、視点!:工学主義に対する批判でも諦念でもなく…

  街を作るという観点(コンセプト重視)ではなく、超高層ビルの自由乱立状態

  (宮台による批判(コンセプトの虚構性批判)、東による批判?(自生秩序への諦念…?))

  建築による空間の機能的分割を無批判に受け入れるのはまずい

   (上方には視覚化された空間、手元には物だけがある空間)

  工学主義(環境管理型権力に対する建築家的評価)のかたちとまずさ

   1、DBに基づく建築形態の自動設計性

   2、振る舞いの被コントロール性

   3、建築をDBと振る舞いの総合として捉える

  →批判的工学主義へ。

 

6、理論:「批判的工学主義」

  (1)1920年代に置ける機能主義

   →対立軸 :純粋機能主義vs.反機能主義

   →乗り越え:批判的機能主義(コルビジュエ)

  (2)1990年代における工学主義

   →対立軸 :純粋工学主義vs.反工学主義

   →乗り越え:批判的工学主義(藤村龍至)

    ex.)データスケープ:オランダ建築家たちの実践

     対面交通をなくし、時速50kmで曲がれる道路を円状に配置

     全体がメインストリートに変えるための土木作業

     ランドスケープ全体を変えてしまう

 

 批判的工学主義とは?

   1、非場所的場所性

     郊外に新しい場所を描く

   2、非作家的作歌性(Architect2.0)

     固有性と効率性を両立した新しい建築家像を作り出す

 

7、質疑

Q.) 商業において動線はもともと意識していたと思うが、なにが新しいのか?

A.) かつては今ひとがいるところへと人を引き入れる仕組みが採られていた。しかし現在であれば、単純に動線設計単位で、切り捨てられる。インフラの真上に作るという変化によって、もはや駅の外に心的/物的に行きづらくなる。(勿論、例外もある:アジアからわざわざガイドブックをみて渋谷のパルコに来たりする)

 

Q.)住宅建築についてはどう考えるべきか?

A.)藤村個人としてはオープンプロセスに基づく多様である生活固有の実情を反映させるためのやり方を考えている。固有性を剥奪するわけではなく、一般化されたプロセスに載せる事でその場と生活に即した固有性(パッケージ?)を自動的に付与していくような手続きとして。